ヘルシンキ小散歩――人魚像を目印に

りんです。

 

花、果実、野菜、人々の賑わいに別れを告げ、マーケット広場を西に進むと、一体の人魚がヘルシンキの街に微笑を投げ、そろそろ海に帰ろうかといった様子です。

 

By Jean-Pierre Dalbéra from Paris, France - "Havis Amanda", la statue de la fontaine de Vallgren (Helsinki), CC BY 2.0, Link

 

この乙女の銅像は《ハヴィス・アマンダ》(1906年)。

 

街の可憐な精神的灯台を目印にして、通りを北に進んでいきましょう。

 

すると、あっと言う間。

 

あなたの左手にはヘルシンキ大学、右手にはヘルシンキ大聖堂、大聖堂の前方には元老院広場が広がっているはず。

 

元老院広場には、また銅像が一体あるようですね。《アレクサンドル2世像》です。

 

アレクサンドル2世(在位1855~81年)はフィンランドがロシア帝国の支配下にあった頃の皇帝ではありますが、例外的に、フィンランド民主化のシンボルとして記憶されています。

 

© Hans Hillewaert, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

 

あちらで、空に顔を出しているのは、フィンランドの大多数を占めるルター派の教会、ヘルシンキ大聖堂です。

 

両手を広げても抱えきれないほど、広い広い石段を登って、その白亜の殿堂の中へ入ると、二体の天使像が祭壇の両脇に並んで、あなたの祈りを待っています。

 

目の前には《キリストの埋葬》。

 

悲しくも温かい不思議な大聖堂の祈りの世界で、今日の旅は終わりにしましょう。

システィーナ礼拝堂のミケランジェロ

りんです。

 

ローマ教皇庁のあるバチカンは、主要スポットの配置を覚えるのが簡単です。

 

まず、中央にカトリック教会の総本山、サン・ピエトロ大聖堂。

 

その東側がサン・ピエトロ広場になっていて、広場の北側に、ローマ教皇の公邸であるバチカン宮殿があります。

 

システィーナ礼拝堂は、バチカン宮殿の西側の一部を成しています。

 

システィーナ礼拝堂のミケランジェロ

ミケランジェロ(1475~1564)の絵画で有名なシスティーナ礼拝堂(1480年)は、シクストゥス4世(在位1471~84年)が建て直させたもので、名称も彼の名から来ています。

 

ここにあるミケランジェロの有名な絵画は2つあります。

 

①《天地創造》

1つ目は、『旧約聖書』の「天地創造」を描いた一連の天井画(1508~12年)です。

 

全部で9場面ありますが、代表的なものとして、下の《アダムの創造》を挙げておきます。

 

ミケランジェロ・ブオナローティ, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

 

②《最後の審判》

2つ目は、システィーナ礼拝堂の祭壇に描かれた《最後の審判》(1535~41年)です。

 

ミケランジェロ・ブオナローティ - See below., パブリック・ドメイン, リンクによる

 

裁き、騒ぎ、狼狽。

 

これを前に、恐れや嫌悪に潰されることなく、静かに祈ることが可能でしょうか?

 

③1540年頃の歴史

この頃、1517年にルター(1483~1546年)が宗教改革を始め、1545年には対抗宗教改革のためのトリエント公会議が開かれています。

 

特に、神聖ローマ帝国のカール5世(在位1519~56年)によるローマ劫掠(1527年)は美術史にも大きな衝撃を与えました。

 

そのため、《最後の審判》はルネサンスよりもマニエリスム(調和よりも誇張・不安定さ・劇的効果が強調)の作品と捉えられています。

NATO――核から見る「軍事的境界」の再編

りんです。

 

ロシアによるウクライナ侵攻(2022年~)をきっかけとして、欧州では「軍事的境界」の再編が進行しているように思われます。

 

もちろん、象徴的に挙げられるのは、フィンランド(2023年)及びスウェーデン(2024年)の新規NATO加盟でしょう。

 

しかし、ここで「軍事的境界」とは、単に国境的な境界線を示すものに止まりません。

 

むしろ、NATO及びロシアで展開されている軍事力の再配置とその網の目こそが、欧州における「軍事的境界」の実体と言えるのではないでしょうか。

 

ロシアの新兵器「オレシュニク」

2024年11月、ウクライナがアメリカ及びイギリスの供与した長距離ミサイル(射程は300~500㎞程度)を用いて、ロシア国内を攻撃しました。

 

ロシア、ウクライナが米製長距離ミサイルでロシア国内攻撃と 米政府も確認 - BBCニュース

ウクライナ、英国製長距離ミサイルでロシア国内を初攻撃 - BBCニュース

 

その直後、ロシアがウクライナにおける実戦で初めて使用した新型の中距離弾道ミサイルが「オレシュニク」(射程3000㎞以上)です。

 

この新型の極超音速ミサイルは核弾頭の搭載も可能で、ロシア側によれば、現状のミサイル防衛システムでは迎撃不能なものとのことです。

 

プーチン氏、ウクライナに「新型の中距離弾道ミサイル」使用と - BBCニュース

 

その後、2025年8月には、ロシアがオレシュニクの量産体制の確立を発表、来月にはロシアとベラルーシ合同の運用演習が行われるとも報じられています。

 

なお、ベラルーシはロシアの同盟国で、同国内にはすでに、ロシアの戦術核兵器が配備されていると見られています。

 

ベラルーシにロシアの戦術核兵器を数十発配備…ルカシェンコ氏、使用条件は「プーチン氏と協議」 : 読売新聞

ベラルーシ、ロシアと9月軍事演習 極超音速中距離ミサイル運用訓練も | ロイター

 

NATOにおける核戦力

2025年3月、フランスのマクロン大統領は同国の核抑止力を欧州全体に広げることを検討し始めると発表しました。

 

NATO加盟国の内、アメリカを除く核保有国はイギリスとフランスの2ヵ国です。

 

ただ、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、トルコの5カ国には、アメリカの核兵器がすでに配備されています(核シェアリング)。

 

フランス マクロン大統領 “仏保有の核抑止力を欧州に拡大 検討へ” | NHK | フランス

 

その後、2025年7月には、イギリスとフランスとの間で核抑止力についての「歴史的」提携が合意されました。

 

また、同月にイギリスとドイツとの間で友好協力条約が締結され、英仏独が安全保障上提携することや、射程2000㎞を超える新型ミサイルを開発することなどが確認されました。

 

これらの動きの背景には、トランプ政権下でアメリカがNATOへの関与を縮小させ、以前ほどアメリカの核抑止力を信頼できなくなっている現実があります。

 

英仏、核抑止力で「歴史的」連携 首脳が合意 | ロイター

英独が相互防衛強化へ、初の「友好協力条約」署名 ロシアの脅威にらみ核戦力でも対話深化 - 産経ニュース

 

更に、イギリスはアメリカの核兵器を搭載可能な戦闘機の購入を発表、NATOの核抑止力においてイギリス空軍が果たす役割を拡張する方針を明らかにしました。

 

イギリス、核搭載可能な戦闘機を購入へ 「戦時下」に備える新安保戦略を発表 - BBCニュース

 

ポーランドという防波堤

NATOが実際にロシアと戦火を交えることになった場合、その最前線となることが予想されるのがポーランドです。

 

ポーランドは以前からNATOの核共有に参加したい旨を発表していましたが、最近ではアメリカの核兵器を国内に配備することを要求してることが注目されます。

 

ポーランド大統領、核兵器の同国内配備を米に要請=FT | ロイター

 

なお、現在、ウクライナ向けの支援物資の大部分がポーランド南東部ジェシュフ・ジャションカ空港から輸送されているようです。

 

ドイツからポーランドにパトリオットが2基配備されたのは、その防衛のためです。

 

ドイツ、ポーランドにパトリオット2基配備 ウクライナ支援拠点の安全確保 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

 

イージス・アショアの配備

2016年、ルーマニアにおいてアメリカの地上配備型の迎撃ミサイル「イージス・アショア」の運用が始まりました。

 

その後、2024年には、やはりポーランドでイージス・アショアの運用が開始されました。

 

米軍、欧州MD計画で初のミサイル稼働 ロシア反発(1/2) - CNN.co.jp

ポーランドに米軍のイージス・アショア基地が開設 露は「封じ込め」と反発 - 産経ニュース

 

同ミサイルは現状では対イラン戦を睨んだ構築になっていますが、ロシアはイージス・アショアの配備に強く反発しています。

 

再考――欧州における「軍事的境界」

通常兵器に関して補足すると、フィンランド及びバルト三国が対人地雷禁止条約を脱退し、ポーランドが脱退の検討を進めています。

 

フィンランド議会、対人地雷禁止条約からの離脱を可決 | ロイター

「悪魔の兵器」廃絶に逆風、バルト3国が対人地雷禁止条約離脱 露のウクライナ侵略を受け - 産経ニュース

 

通常兵器にまで目を移すと、欧州における「軍事的境界」の再編の進行は更に急激なものになっていると言わざるを得ません。

 

NATOの防衛の前線は軍事的な配置から見ても東側に移行しつつあり、特に最前線であるポーランドの動向が注目されます。

 

その流れで、英仏独が安全保障上提携し、核抑止力についての考え方を軟化・拡大させつつある傾向には注視しなければならないでしょう。

 

現状では、イギリス空軍がその役割を拡大させ、空域においてアメリカの核抑止力の運用に貢献していく方針が明らかになっています。

 

通常兵器だけではなく核戦力に関しても、徐々に欧州の東側へと実践的運用が拡張、また、各国の核抑止における役割が収束していく予兆が見られると言えます。